なぜグレープフルーツは薬と飲み合わせがよくないの?

「この薬を飲んでいる間はグレープフルーツジュースを飲まないようにしてください。」

そんな説明を医師や薬剤師から聞いたこともある人もいるのではないでしょうか?

グレープフルーツジュースを飲むなと言われると、飲みたくなってしまうのは私だけではないはず。

しかし医師・薬剤師から先ほどのような説明をされた場合は、グレープフルーツを摂取しないように気をつけなければいけません。

グレープフルーツが薬の代謝に影響をあたえて、薬が強く効きすぎてしまうからです。

 

今回の記事では

  • グレープフルーツはどのようにして薬に影響をあたえるのか
  • グレープフルーツと相性のよくない薬にはどんなものがあるのか
  • グレープフルーツ以外にも気をつけるべき柑橘系の果物

についてわかりやすく紹介していきます。

 

グレープフルーツはなぜ薬と飲み合わせが悪い?

グレープフルーツが薬に影響をあたえるのは、グレープフルーツに含まれる「フマノクマリン」という成分が原因です。

フマノクマリンがくすりを代謝する酵素CY3A4を邪魔するので、お薬の代謝ができなくなってしまいます。

(代謝酵素CYP3A4は、シップスリーエーフォーと読みます)

 

フマノクマリンがCYP3A4を阻害する具体的な機序は下記のとおりです。

お薬は主に小腸から吸収されて体内へ入ります。

しかし小腸上皮細胞にあるCYP3A4がくすりを吸収する際に、一部の薬とくっつき代謝・分解します。

ここで代謝されずに残ったくすりが、血中に入っていくことに。

ところがグレープフルーツジュースと一緒に服用すると、グレープフルーツに含まれる「フマノクマリン」がCYP3A4にくっついてCYP3A4の働きを邪魔します。

小腸上皮細胞のCYP3A4で本来は分解されしまうはずの薬が、分解されずそのまま吸収。

そうすると、くすりが予想した以上に体内に入ってきて、薬が効きすぎてしまうことがあります。

 

グレープフルーツとカルシウム拮抗薬の相性はよくない

グレープフルーツと相性の悪いくすりは血圧を下げるくすりの1種であるカルシウム拮抗薬が有名です。

具体的な薬品名(成分名)では下記のとおり。

  • アゼルニジピン(カルブロック)
  • カルスロット(マニジピン)
  • シルニジピン(アテレック)
  • アダラート(ニフェジピン)
  • コニール(ベニジピン)
  • ワソラン(ベラパミル)

先ほど紹介したように、グレープフルーツによりCYP3A4の働きが邪魔をされると降圧剤の吸収がよくなるため、作用が強く出ます。

そうなると、くすりの効きすぎにより血圧が低下し、ふらつきなどがおこる可能性が。

しかしお薬も改良してきており、安全性を高めています。

近年、カルシウム拮抗薬で一番よく処方されているアムロジピン(アムロジン・ノルバスク)は、CYP3A4で代謝されにくくされており、グレープフルーツの影響を受けにくくなっています。

とはいっても、グレープフルーツを食べていいわけではなく、もし誤ってグレープフルーツを食べてしまっても大きな影響が出にくいという認識です。

 

意外と見落としがちな「配合剤」

上記の降圧剤は飲んでないから大丈夫だと思った方も、もう一度チェックしてほしいくすりがあります。

それが「配合剤」。
配合剤は書いて字のごとく、2種類以上の成分が合わさった薬です。

配合剤は2剤以上のくすりを1つにまとめれるため、管理しやすく飲みやすくなります。

しかしその一方で合剤になると、何のくすりが入っているのかがわかりにくくなるデメリットも。

カルブロックという薬を服用していなくても、レザルタスというくすりにはカルブロックが入っています。

シルニジピンという薬を服用していなくても アテディオの中にはシルニジピンが。

配合剤は一見わかりにくいので、何の成分が配合されている薬なのかチェックする必要があります。

グレープフルーツの影響を受けやすい成分の入ってる配合剤レザルタス・アテディオを服用している時にはグレープフルーツを摂取しないようにしましょう。

  

グレープフルーツと飲み合わせのよくないその他のくすり

カルシウム拮抗薬以外のくすりにもグレープフルーツの影響を受ける薬があります。

グレープフルーツに影響を受ける代表的なくすりは次のとおり。

薬の作用成分名(商品名)
コレステロールを下げる薬アトルバスタチン(リピトール)
シンバスタチン(リポバス)
血液さらさらのくすり(抗血小板薬)シロスタゾール(プレタール)
免疫抑制薬シクロスポリン(ネオーラル)
タクロリムス(プログラフ)
クローン病治療薬ブテソニド(ゼンタコート)
抗てんかん薬カルママゼピン(テグレトール)
利尿剤トルバプタン(サムスカ)

コレステロールを下げる薬や、免疫抑制薬にもグレープフルーツの影響を受けるものがあります。

これらの薬を服用している際にはグレープフルーツを摂取しないよう気をつけてください。

上記のお薬がすべてではないので、今飲んでいるくすりとグレープフルーツの飲みあわせが気になる方はかかりつけの薬局に確認してみましょう。

 

グレープフルーツジュース以外の柑橘系は食べてもいいの?

グレープフルーツがダメな薬を服用していると、オレンジやレモンはどうなの?って思う方も多いと思います。

そこで、他の柑橘系のフマノクマリンについても調べたデータをご紹介します。

フマノクマリン類であるDHB(ジヒドロキシベルガモチン)の含有量(μg/ml)は下記の通りでした。

柑橘名果汁
グレープフルーツ133600
スウィーティ―17.52400
バンペイユ12.575
メロゴールド12.53400
ダイダイ3.272
ブンタン2.25660
はっさく0.9220
サワーポメロ11000
甘夏みかん0.61040
レモン0.05180
ライム0.9635
ネーブルオレンジ0.050.24
スウィートオレンジ0.0116
温州みかん検出なし検出なし
ポンカン検出なし0.08
いよかん検出なし0.2
デコポン検出なし検出なし
ゆず0.010.4
カボス0.011.44
すだち検出なし0.14
キンカン検出なし0.02
佐賀大学医学部付属病院薬剤部
酵素免疫測定法による食物・生薬中のフマノクマリン類含量のスクリーニングより引用

※参考 酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング

果汁におけるフマノクマリン含有量(DHB換算値)は、
・スウィーティ―
・バンペイユ
・メロゴールド
がグレープフルーツと同等でした。

果皮におけるフマノクマリン含有量(DHB換算値)は
・スウィーティ―
・メロゴールド
・甘夏みかん
・サワーポメロ
が多いことがわかりました。

またほとんどの柑橘系において、果汁よりも果皮に数十倍から数千倍のフマノクマリン類が含まれています

フマノクマリンが多く含まれている柑橘系の中で、グレープフルーツがもっとも身近であるために、「グレープフルーツは食べてないように」と言われることが多いです。

しかし、スウィーティ―などもグレープフルーツと同様に薬との相互作用に注意が必要な果物です。

レモンやオレンジ・みかんの果実であれば薬との飲み合わせは問題ないと言えます。

 

まとめ

今回の記事では、グレープフルーツと飲みあわせのよくない薬について紹介しました。

今回の内容をまとめます。

まとめ

・グレープフルーツに含まれる「フマノクマリン」が代謝酵素CYP3A4を阻害する

・小腸でCYP3A4が阻害されると薬の吸収がよくなり、効きすぎの原因に

・グレープフルーツと相性のよくないくすりの代表は降圧剤のカルシウム拮抗薬

・スウィーティ―などの柑橘系でも注意が必要なものがある

グレープフルーツと飲み合わせのよくない薬は、グレープフルーツを摂取することで強く効きすぎてそれが副作用につながることもあります。

医師や薬剤師から「この薬を服用しているときは、グレープフルーツを摂取しないように」と言われているときには、グレープフルーツを避けるようにしましょう。

いま服用しているくすりでグレープフルーツを服用していいのか気になる方は、かかりつけの薬局・薬剤師に相談してみてください。